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建築と景観

「ここでは、自然と建築が四季を通じて歌い合いはじめているかに思われる」-これは完成した建物を、設計士・瀧光夫氏が評価したものです。光と水があふれる古今伝授の里フィールドミュージアムの魅力を、建物と景観から紹介します。

自然と一体となった建築

四季折々、また、朝と夕で建物は違った表情を見せてくれます。





光あふれる空間

古今伝授の里フィールドミュージアムの建物は、大きな一枚板のガラスが各所に使われています。また、屋根にもトップライトと呼ばれる採光用のガラスがはめ込まれています。このため、ふんだんに陽射しが降り注ぎます。


水あふれる空間

古今伝授の里フィールドミュージアムには、2つの池とたくさんの水路があります。この水は、すべて山水。かつて農業用水として棚田を潤していた水を、建物に活かしました。


窓の秘密

古今伝授の里フィールドミュージアムには、基本的に引き違いの窓はありません。窓は、ルーパー式になっています。


池の秘密①

レストラン「ももちどり」前の池には、鯉はいません。「池には鯉」という発想ではなく、水鏡としての建築空間なのです。


池の秘密②

篠脇山荘の濡れ縁に立つと、池面に篠脇山が映り込んでみえます。篠脇山は、かつての領主・東氏の城があったところ。古と今、あなたと私がつながっている、というメッセージが込められています。


屋根の秘密

篠脇山荘、和歌文学館、レストラン「ももちどり」、それぞれの建物の屋根が違うことにお気づきですか。旧大和町(現・郡上市大和町)に当時あった建物の屋根を再現しています。篠脇山荘は茅葺、和歌文学館は板葺き、レストラン「ももちどり」は檜皮葺をイメージした瓦葺きとなっています。


配置の秘密

古今伝授の里フィールドミュージアムができる前、ここには段上の田や畑が広がっていました。その地形(高低差)を生かして、建物が配置されています。(立体回遊式といいます。)


空間の広がり

古今伝授の里フィールドミュージアムは電線が地中化されています。県道のガードレースも自然のガードロープにし、対岸の景色が透けてみえるよう工夫がされています。このため、東氏館跡庭園にむかって、広がりのある空間を目にすることができます。


生活文化遺構

かつて畑だった頃に築かれた、シシ垣、いも穴などの生活文化遺構が修繕され、生かされています。例えば、いも穴は、篠脇山荘内から眺めると、ちょうど穴の部分に、池べりの紅葉が映り込む仕掛けになっています。

社会的評価

建物は、建築業協会賞(平成6年)、中部建築賞(同年)、公共建築百選(平成10年)はじめ、数々の賞を受賞しています。


建築秘密

昭和54年、東氏館跡庭園が出現したことを受け、旧大和町(現・郡上市)では、一帯を「古今伝授の里」として整備する計画ができました。具体的には、展示・集会・食堂など多目的機能を備えた「和歌会館」を建設し、国内外の和歌・短歌愛好者の拠点にしようとしました。


当時、一足先に東氏館跡庭園・今古植物園の造園を手がけていた三宅宣哉氏(緑地設計研究所)から紹介を受けた、建築家・瀧光夫氏(瀧光夫建築・都市設計事務所)に相談したところ、次のような意見が寄せられました。

複合機能を持つ「会館」を1棟で計画すると、嵩高いものとなり、あたりの風景となじまない。また、特殊建築物として、おそらく耐火構造(RC造)になる。食堂、展示館、講堂と棟に分けて、段上の立地を生かして配置すべきではないか。敷地は田んぼであったなら、水を張れば随所に池がつくれる。史跡とその背後の篠脇城跡の連山を借景にすれば、互いに関連づけられた里の景観が生まれる。講堂などはオーディトリアム的でなく、茅葺の広間にし、借景の水庭などを設けて「歌詠みの里」らしくしてはどうか。

この提案を受け、交流館(レストラン「ももちどり」)、展示館(和歌文学館)、研修館(篠脇山荘)の3棟に分けることとなりました。

3棟は、それぞれが独自の形態を持ちながら、互いに関連づけられたかたちで、段状になっていた地形を生かしながら配置。そこに池や水の流れを加えました。多雪地ということから、鉄骨造と木造の混合構造になりました。また、明るい内部をつくるため、大きな開口部と天窓が設けられました。

これらのことで、屋内外が渾然一体となり、立体的な回遊性が生まれました。裏山や遠山がいろいろな角度から借景として見え、「歌詠みの里」らしい雰囲気になりました。これらの施設をこのかたちで配置したことで、対岸の史跡や遠山と敷地一帯は、視覚的に関連付けられ、構造化され、新しい里の景観ができあがりました。

研修館 「篠脇山荘」

伝統的な茅葺家屋にトップライト、全面ガラスにより、茅葺ながら明るい屋内空間を実現。積雪の重みを考え、構造は鉄骨造となっています。日本の伝統的な建築のデザインと、近代建築構造が、心地のよい空間を創り上げました。現在は茅葺の上に伝統的な銅板をかぶせた屋根となっています。


また、池面に映り込む篠脇山などの連山や、裏側に残るいも穴(根菜類の貯蔵庫)やシシ垣などの生活遺構が、日本人が育んだ美を感じさせます。

普段は、無料で一般公開されていますが、歌会・茶会・コンサート・会議など貸切での利用もできます。

*利用方法などは (「施設概要」ページへ)

展示館 「和歌文学館」

地形の高低差を利用しながら、屋内外の様々な景色が展開するよう設計されています。


展示館としては珍しい明るい館内は、柱を視覚的に目立たなくするため、部分的に鏡貼りになっています。また、外壁に節のある杉板を用いることで、周りの風景にあった、やわらかな印象を生み出しています。

通常、和歌に関する展示物となると、巻物、短冊、色紙といった小さなサイズのものになりがちです。しかし、和  歌文学史を代表する歌人を大パネルで紹介したり、コキン和歌集をテーマとした長大な壁画「古今伝授絵巻」を配することで、広い空間の中でもバランスのよい展示内容としています。

*入館には料金が必要です。 (「施設概要」ページへ)

交流レストラン 「ももちどり」

水田だったところに水を張り、池としたことで、水に浮かんだレストランを創り上げました。建物は、篠脇山と関連付けて配置されています。


内部は、2階吹き抜け、トップライト(屋根の採光用のガラス張り)、3面総ガラス張りにすることで、広く明るい空間を生み出しました。夜には、間接照明によって、池周りの紅葉が照らし出され、池面にその姿が映りこみます。

本格フランス料理を楽しむことができるレストランの名前「ももちどり」は、古今伝授秘伝の鳥の名前に由来するもので、さまざまな鳥たちが集いさえずる様を意味します。このように、大勢のお客様が訪れ、談笑する場所になってほしいとの願いを込めて名づけられました。店内中央の巨大な栃のテーブルでは、食事と会話、周りの風景を楽しむ人たちでにぎわっています。

*レストラン「ももちどり」のメニューなどは(「ももちどり」ページへ)

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