HOME > 平成29年度 短歌道場in古今伝授の里 結果発表


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短歌道場in古今伝授の里

◆開催日
平成29年12月17日(日)
◆会場
古今伝授の里フィールドミュージアム
(岐阜県郡上市大和町牧912-1 TEL:0575-88-3244)
◆内容   
開会式、予選トーナメント、決勝トーナメント、表彰式、閉会式
◆審査員 
(敬称略、順不同)
小塩卓哉 (日本歌人クラブ東海ブロック長)
鈴木竹志 (中部日本歌人会委員長)
後藤すみ子 (岐阜県歌人クラブ副会長)
森井マスミ (玲瓏)
三島麻亜子 (短歌人)
谷川電話 (かばん)

◆参加者
*海と珈琲と石井 (石井僚一、伊舎堂仁、法橋ひらく、平岡直子、谷川由里子)
gekoの会 (貝澤駿一、山川創、永山凌平)
*さけさけ (亀山真実、阿部圭吾、北澤奈美、大森晴加、九条しょーこ)
*つよいズ (山本まとも、相田奈緒、大平千賀、睦月都、ユキノ進)
*夏目漱石弟子の会 (桜望子、福士菜々美、郡司和斗)
*半纏たたさんwithK (香村かな、三潴忠典、黒川鮪)
*広大短歌会 (杉田抱僕、石原しず歌、眞子和也、瀬口真司)
*立命短歌会 (坂本歩実、草間凡平、淡島うる、立川ミキ、はたえり)
*運営協力スタッフ (濱松哲朗・廣野翔一・岡田宙也・若林芳樹・北村早紀・榛葉純)

◆結果発表

*優勝チーム
海と珈琲と石井 (石井僚一、伊舎堂仁、法橋ひらく、平岡直子、谷川由里子)
*準優勝チーム
つよいズ (山本まとも、相田奈緒、大平千賀、睦月都、ユキノ進)
*特別賞
中部日本歌人会賞 貝澤駿一 (gekoの会)
*特別賞
岐阜県歌人クラブ賞 桜望子 (夏目漱石弟子の会)
*特別賞
角川『短歌』編集部賞 法橋ひらく (海と珈琲と石井)
*特別賞
互選賞 法橋ひらく (海と珈琲と石井)
*特別賞
グッドコメント賞 伊舎堂仁 (海と珈琲と石井)

◆ 短歌道場in古今伝授の里 全試合詠草

【1回戦 A】
チーム名:つよいズ
先鋒「暗い森を歩く樹々のごと終電の新宿駅へ向かうわれらは」 (ユキノ進/念人:大平千賀)
次鋒「説明はたがいにやめて会う日々に大きなホームランもみたりした」 (相田奈緒/念人:ユキノ進)
中堅「悲しさの たぶん冬の日爪で剥くCDフィルムのやうな薄さの」 (睦月都/念人:山本まとも)
副将「きれいな傘をきれいに抱えて立つひとの降り去っていく川縁の駅」 (山本まとも/念人:相田奈緒)
大将「迎えに行く あなたが夜の錨なら夜をもぐってあなたへと行く」 (大平千賀/念人:睦月都)
――対――
チーム名:広大短歌会
先鋒「母さんに怒鳴られちゃった クワガタを前頭葉で飼ったのばれて」 (石原しず歌/念人:眞子和也)
次鋒「伝説のプロ薬剤師謹製のイブを飲んだらクラブに行こう」 (眞子和也/念人:瀬口真司)
中堅「青い鳥海に溶かして濡れた手を繋いで二人もう帰ろうか」 (杉田抱僕/念人:石原しず歌)
副将「縁結び総括マネージャーとして道玄坂上交差点に立つ (眞子和也/念人:杉田抱僕)
大将「親しげに差し出す彼の掌に埋め込まれてるFFボタン」 (瀬口真司/念人:杉田抱僕)

【1回戦 B】
チーム名:gekoの会
先鋒「コンビニに行って帰って成し遂げたことのひとつは空を見ること」 (山川創/念人:永山凌平)
次鋒「こもごもと現物主義を説きながら棋士が再現する同歩の手」 (永山凌平/念人:貝澤駿一)
中堅「あらがわぬベラルーシ語も記されて「危機言語一覧」わが手にふれる」 (貝澤駿一/念人:永山凌平)
副将「夢で見た花の名前を思い出す無縁仏になる夜までに」 (山川創/念人:永山凌平)
大将「エミール・ガレの花器のおもてに垂りてゐる硝子細工の藤の花ぶさ」 (永山凌平/念人:貝澤駿一)
――対――
チーム名:立命短歌会
先鋒「つきかげの直刺す背なか暗がりを好むもの等を好む性質」 (坂本歩実/念人:淡島うる)
次鋒「二時間もあればお前を口説けると言った僧侶の般若心経」 (淡島うる/念人:坂本歩実)
中堅「ルービックキューブを売り飛ばす前に緑だけでも揃えたかった」 (立川ミキ/念人:はたえり)
副将「春の午後 瞬足履いた小人らがちゃぶ台の縁で差をつけまくる」 (草間凡平/念人:立川ミキ)
大将「鮮明な砂粒ばかり映してる君が途中で転んだビデオ」 (はたえり/念人:草間凡平)

【2回戦 A】
チーム名:さけさけ
先鋒「理科室に朝日はゆるく射し込んで春を溜めゆく骨格模型」 (阿部圭吾/念人:九条しょーこ)
次鋒「トーチカの影立つめでに燦燦と概説碑文照らせり真夏」 (亀山真実/念人:北澤奈美)
中堅「自爆テロするぞ納豆巻あるぞ優先席でいいから譲れ」 (大森晴加/念人:阿部圭吾)
副将「はつ夏の恋をしようか縁日の瓶のくびれをなぞる指先」 (北澤奈美/念人:大森晴加)
大将「ながい夜あなたはぼくにパスカルの六角形の定理ほどいて」 (九条しょーこ/念人:亀山真実)
――対――
チーム名:夏目漱石弟子の会
先鋒「そのための右手 呼吸を整えてフリースローの白線に立つ」 (郡司和斗/念人:桜望子)
次鋒「九階を春秋時代にして弾む先生の声「不、亦、説、乎」」 (桜望子/念人:福士菜々美)
中堅「一ミリも身を削らずに愛される術はないのかアンパンマンよ」 (福士菜々美/念人:郡司和斗)
副将「濡れ縁のひかりのつぶを眺めつつ共犯めいた眠りの土曜」 (郡司和斗/念人:桜望子)
大将「落選の知らせを受けた朝 息が白くてこれから何色にもなる」 (桜望子/念人:郡司和斗)

【2回戦 B】
チーム名:海と珈琲と石井
先鋒「ミキサーの暴れる蓋に手をあてて二度と会わない人をおもった」 (石井僚一/念人:谷川由里子)
次鋒「ご高説どうもさんくすべりまっちょ頭の中で腹筋をする」 (法橋ひらく/念人:伊舎堂仁)
中堅「台風が行って月曜日が来てる場合じゃないよ 見られてる感」 (伊舎堂仁/念人:石井僚一)
副将「縁起のいい数字だったら靴箱の札は即席のお守りになる」 (谷川由里子/念人:平岡直子)
大将「わたしそれ呼ばれてないってすぐ思う耳だけ森から出してるような」 (平岡直子/念人:法橋ひらく)
――対――
チーム名:半纏たたさんwithK
先鋒「本能がきみがいいの!叫んでる!マックポテトのアラームも鳴る」 (黒川鮪/念人:三潴忠典)
次鋒「お手付きを伝染病という説が広まってゆくかるた大会」 (三潴忠典/念人:黒川鮪)
中堅「吐くことを考えながら飯を食う傾く箸を指が支える」 (三潴忠典/念人:香村かな)
副将「遠縁の葬式で知る相関図ほのかに枝に香る紅梅」 (香村かな/念人:黒川鮪)
大将「ひとり 自分を抱いて寝る腕時計ちくりひとりちくり あ、きみの心臓」 (黒川鮪/念人:三潴忠典)

【準決勝 ①】
チーム名:つよいズ
先鋒「まぶしさをこらえていたらやって来て私の顔の真似をする人」 (相田奈緒/念人:山本まとも)
次鋒「観覧車に双子は眠る地動説のさみしい空を一巡りして」 (ユキノ進/念人:大平千賀)
中堅「ハンドベル奏者の右手左手の音の歩みせり少女ふたりは」 (睦月都/念人:相田奈緒)
副将「池をにごす鯉のうごきは遠くなり人ひとり陸の縁に残さる」 (大平千賀/念人:ユキノ進)
大将「悲しかった昨夜がどこにもない朝のふとんの上で目をはんびらく」 (山本まとも/念人:睦月都)
――対――
チーム名:gekoの会
先鋒「応答せよ夏よ 僕らの終わらない無垢よ 無垢なる詩の扉絵よ」 (貝澤駿一/念人:山川創)
次鋒「信号は黄色のままで動かない説得されてあげてもいいよ」 (山川創/念人:永山凌平)
中堅「アパートの外階段にゴキブリの死体がありて数日ありぬ」 (永山凌平/念人:貝澤駿一)
副将「無縁坂に夕日はさして書かれざる母の手紙の一行と思う」 (貝澤駿一/念人:山川創)
大将「ザミャーチン、ブルガーコフと唱えれば夏空に降り出す細雪」 (山川創/念人:永山凌平)

【エキシビジョンマッチ
チーム名:立命短歌会
先鋒「おなかから魚が生えてどうだろう 切手がわりに鱗を貼った」 (はたえり/念人:立川ミキ)
次鋒「二十二時 キリスト教を説くひとと帰れば今日は友達がいる」 (立川ミキ/念人:はたえり)
中堅「この冬が終われば二十歳 白菜を茹でては食べる茹でては食べる」 (淡島うる/念人:坂本歩実)
副将「縁日のひよこ襲いし猫たちが栄える篠の原の夕映え」 (坂本歩実/念人:草間凡平)
大将「ななかまど娼婦のように色づいて遠距離恋愛断固反対」 (草間凡平/念人:淡島うる)
――対――
チーム名:広大短歌会
先鋒「幼子の寝返りと同じはやさで朝の銀河に星をばらまく」 (眞子和也/念人:杉田抱僕)
次鋒「伝説のレスラー風な演出でおれが来るたび花火よあがれ」 (瀬口真司/念人:眞子和也)
中堅「恋人の代用品は比較的安価で美しいゼリエース」 (石原しず歌/念人:瀬口真司)
副将「腐れ縁にしたいと思う君がいてぬか床を混ぜるような文通」 (杉田抱僕/念人:瀬口真司)
大将「けだ俺やしも官警る迫でき向逆雨るいてれさ生再逆」 (眞子和也/念人:石原しず歌)

【準決勝 ②】
チーム名:夏目漱石弟子の会
先鋒「山形の冬を一緒に連れてきたりんご握ればリンと冷たい」 (桜望子/念人:福士菜々美)
次鋒「秒針が滑らかにすすむことを知る説教響く教室の中」 (福士菜々美/念人:郡司和斗)
中堅「アキアカネ火花のように火葬場を飛んでゆきもう戻れない過去」 (桜望子/念人:福士菜々美)
副将「濡れ縁のひかりのつぶを眺めつつ共犯めいた眠りの土曜」 (郡司和斗/念人:桜望子)
大将「振り向きし蟷螂の貌見つめおりジャコメッティ展より帰りきて」 (郡司和斗/念人:桜望子)
――対――
チーム名:海と珈琲と石井
先鋒「とても軽そうな子犬が前足に落ち葉を絡めて歩いていった」 (谷川由里子/念人:平岡直子)
次鋒「拡声器片手に夜を駆け抜ける 道を説くから道に変われよ」 (石井僚一/念人:谷川由里子)
中堅「じゃあおれが おれが おれが~でどうしようもない、帰りたくなるのは3人目」 (伊舎堂仁/念人:法橋ひらく)
副将「本体の電源で消すバラエティ番組これもご縁ですから」 (平岡直子/念人:伊舎堂仁)
大将「はしばみ色の運河の上のモノレールいままで誰に謝ってたの」 (法橋ひらく/念人:石井僚一

【エキシビジョンマッチ
チーム名:半纏たたさんwithK
先鋒「くびすじに覆い被さる肩ごしに「どうぶつずかん」の背表紙を見る」 (黒川鮪/念人:香村かな)
次鋒「解説を音声ガイドで聞いたあともういちどみる空の色あい」 (香村かな/念人:黒川鮪)
中堅「ひんやりと充てがわれたる聴診器その医師だけが知る冬の聲」 (香村かな/念人:三潴忠典)
副将「血縁のない続柄「同居人」から「妻」になる届出をする」 (三潴忠典/念人:香村かな)
大将「日盛りの喫煙室に一匹の蝿ゆるやかに流れるレゲエ」 (香村かな/念人:黒川鮪)
――対――
チーム名:さけさけ
先鋒「冬の終わりのせつない恋のようでした取り残された白くまアイス」 (九条しょーこ/念人:亀山真実)
次鋒「伝説の勇者の剣を引き抜いてそのまま平和な町で暮らした」 (大森晴加/念人:阿部圭吾)
中堅「くちびるの小さくひらく病床の祖父よ代田に雨の紋満つ」 (北澤奈美/念人:大森晴加)
副将「触れあえばそこは僕らの縁(ふち)となり水平線のようにゆるやか」 (阿部圭吾/念人:九条しょーこ)
大将「試験日の玄関暗し しろたへの宇宙飛行士ほどに着膨れ」 (亀山真実/念人:北澤奈美)

【決勝戦】
チーム名:海と珈琲と石井
先鋒「バランスボールに座ってご飯を食べるきみ、きみはお箸がとても似合うよ」 (石井僚一/念人:伊舎堂仁)
次鋒「キャリーケースの中に入ってしまいたい平日は地動説を支持する」 (平岡直子/念人:谷川由里子)
中堅「青豆は大きなスプーンに掬われてきみが動かす夜の景色だ」 (谷川由里子/念人:法橋ひらく)
副将「大型で非常に強い妙縁が温帯低気圧に変わるまで」 (伊舎堂仁/念人:平岡直子)
大将「ジェンガ 手を触れることためらった一瞬から戻れない ジェンガ」 (法橋ひらく/念人: 石井僚一)
――対――
チーム名:つよいズ
先鋒「ふゆが来る ふゆとは肺を触ったり神社の砂利を鳴らしたりする」 (山本まとも/念人:大平千賀)
次鋒「踏切でほどくマフラー 声がする説きながら高くなりゆく声が」 (大平千賀/念人:相田奈緒)
中堅「なわとびをつかれてやめるおしまいの一回 なわが小石がはねる」 (相田奈緒/念人:山本まとも)
副将「空き瓶の縁を歩いている蟻が少しの風に吹かれて消える」 (ユキノ進/念人:睦月都)
大将「吠えぐせのなおらぬきみのばか犬と暮秋その庭に点る柚子の実」 (睦月都/念人:ユキノ進)

◆短歌道場in古今伝授の里 詠草一覧

≪チーム名:海と珈琲と石井≫
[自由詠]ミキサーの暴れる蓋に手をあてて二度と会わない人をおもった (石井僚一)
[自由詠]台風が行って月曜日が来てる場合じゃないよ 見られてる感 (伊舎堂仁)
[自由詠]わたしそれ呼ばれてないってすぐ思う耳だけ森から出してるような (平岡直子)
[自由詠]とても軽そうな子犬が前足に落ち葉を絡めて歩いていった (谷川由里子)
[自由詠]じゃあおれが おれが おれが~でどうしようもない、帰りたくなるのは3人目 (伊舎堂仁)
[自由詠]はしばみ色の運河の上のモノレールいままで誰に謝ってたの (法橋ひらく)
[自由詠]バランスボールに座ってご飯を食べるきみ、きみはお箸がとても似合うよ (石井僚一)
[自由詠]青豆は大きなスプーンに掬われてきみが動かす夜の景色だ (谷川由里子)
[自由詠]非公開
[自由詠]元彼が店長してる居酒屋、ときこえてホームの水たまり (伊舎堂仁)
[題詠説]ご高説どうもさんくすべりまっちょ頭の中で腹筋をする (法橋ひらく)
[題詠説]拡声器片手に夜を駆け抜ける 道を説くから道に変われよ (石井僚一)
[題詠説]キャリーケースの中に入ってしまいたい平日は地動説を支持する (平岡直子)
[題詠縁]縁起のいい数字だったら靴箱の札は即席のお守りになる (谷川由里子)
[題詠縁]本体の電源で消すバラエティ番組これもご縁ですから (平岡直子)
[題詠縁]大型で非常に強い妙縁が温帯低気圧に変わるまで (伊舎堂仁)
[ジョーカー]ジェンガ 手を触れることためらった一瞬から戻れない ジェンガ (法橋ひらく)
≪チーム名:gekoの会≫
[自由詠]背泳ぎはひだりにぶれて少年が空のすきまに見るバルト海 (貝澤駿一)
[自由詠]絵はがきの写真はいつも晴れの日でひとつ購いたりその晴れの日を (貝澤駿一)
[自由詠]あらがわぬベラルーシ語も記されて「危機言語一覧」わが手にふれる (貝澤駿一)
[自由詠]コンビニに行って帰って成し遂げたことのひとつは空を見ること (山川創)
[自由詠]ザミャーチン、ブルガーコフと唱えれば夏空に降り出す細雪 (山川創)
[自由詠]夕立が誰の許可なく降り出して知らない墓がまとめて濡れる (山川創)
[自由詠]アパートの外階段にゴキブリの死体がありて数日ありぬ (永山凌平)
[自由詠]半分に切りたるキウイフルーツの肉を穿てり朝(あした)の匙は (永山凌平)
[自由詠]母のこゑ母のシルエットの人が障子戸の奥へ吾を呼びたり (永山凌平)
[自由詠]エミール・ガレの花器のおもてに垂りてゐる硝子細工の藤の花ぶさ (永山凌平)
[題詠説]デボン紀から三畳紀までを説きし日の地学教師の果てしない海 (貝澤駿一)
[題詠説]信号は黄色のままで動かない 説得されてあげてもいいよ (山川創)
[題詠説]こもごもと現物主義を説きながら棋士が再現する同歩の手 (永山凌平)
[題詠縁]無縁坂に夕日はさして書かれざる母の手紙の一行と思う (貝澤駿一)
[題詠縁]夢で見た花の名前を思い出す無縁仏になる夜までに (山川創)
[題詠縁]濡れ縁に蜜柑の皮が干されあり祖父母の家に祖母のゐし頃 (永山凌平)
[ジョーカー]応答せよ夏よ 僕らの終わらない無垢よ 無垢なる詩の扉絵よ (貝澤駿一)
≪チーム名:さけさけ≫
[自由詠]その胸に大陸を飼っているような風の匂いの君に近付く (阿部圭吾)
[自由詠]理科室に朝日はゆるく射し込んで春を溜めゆく骨格模型 (阿部圭吾)
[自由詠]変声の喉にはまったビー玉もこの身がラムネ壜なら割った (亀山真実)
[自由詠]試験日の玄関暗し しろたへの宇宙飛行士ほどに着膨れ (亀山真実)
[自由詠]一本のばななひとくち ないていたぶん、いきていくぶんのひとくち (大森晴加)
[自由詠]ながい夜あなたはぼくにパスカルの六角形の定理ほどいて (九条しょーこ)
[自由詠]冬の終わりのせつない恋のようでした取り残された白くまアイス (九条しょーこ)
[自由詠]始発と終電 これは対義語じゃなくてね スカートのしわ無意味にのばす (九条しょーこ)
[自由詠]くちびるの小さくひらく病床の祖父よ代田に雨の紋満つ (北澤奈美)
[自由詠]花桃の開花尋ぬる曾祖母の丸き背中をつつむ涼風(りょうふう) (北澤奈美)
[題詠説]トーチカの影立つまでに燦燦と概説碑文照らせり真夏 (亀山真実)
[題詠説]一説によればダイスの1の目は未来を思ううさぎのひとみ (九条しょーこ)
[題詠説]伝説の勇者の剣を引き抜いてそのまま平和な町で暮らした (大森晴加)
[題詠縁]はつ夏の恋をしようか縁日の瓶のくびれをなぞる指先 (北澤奈美)
[題詠縁]触れあえばそこは僕らの縁(ふち)となり水平線のようにゆるやか (阿部圭吾)
[題詠縁]わが胸の縁側に母座りをりふいに化粧の香をただよはす (大森晴加)
[ジョーカー]自爆テロするぞ納豆巻きあるぞ優先席でいいから譲れ (大森晴加)
≪チーム名:つよいズ≫
[自由詠]なわとびをつかれてやめるおしまいの一回 なわが小石をはねる (相田奈緒)
[自由詠]まぶしさをこらえていたらやって来て私の顔の真似をする人 (相田奈緒)
[自由詠]ゆっくりと心はひらく 実際に月に行ったら怖いだろうか (相田奈緒)
[自由詠]迎えに行く あなたが夜の錨なら夜をもぐってあなたへと行く (大平千賀)
[自由詠]悲しさの たぶん冬の日爪で剥くCDフィルムのやうな薄さの (睦月都)
[自由詠]吠えぐせのなおらぬきみのばか犬と暮秋その庭に点る柚子の実 (睦月都)
[自由詠]公団に明かりがともり帰る人ひとりひとつの動く心臓 (ユキノ進)
[自由詠]暗い森を歩く樹々のごと終電の新宿駅へ向かうわれらは (ユキノ進)
[自由詠]悲しかった昨夜がどこにもない朝のふとんの上で目をはんびらく (山本まとも)
[自由詠]ふゆが来る ふゆとは肺を触ったり神社の砂利を鳴らしたりする (山本まとも)
[題詠説]踏切でほどくマフラー 声がする説きながら高くなりゆく声が (大平千賀)
[題詠説]観覧車に双子は眠る地動説のさみしい空を一巡りして (ユキノ進)
[題詠説]説明はたがいにやめて会う日々に大きなホームランもみたりした (相田奈緒)
[題詠縁]池をにごす鯉のうごきは遠くなり人ひとり陸の縁に残さる (大平千賀)
[題詠縁]空き瓶の縁を歩いている蟻が少しの風に吹かれて消える (ユキノ進)
[題詠縁]きれいな傘をきれいに抱えて立つひとの降り去ってゆく川縁の駅 (山本まとも)
[ジョーカー]ハンドベル奏者の右手左手の音(ね)の歩みせり少女ふたりは (睦月都)
≪チーム名:夏目漱石弟子の会≫
[自由詠]アキアカネ火花のように火葬場を飛んでゆきもう戻れない過去 (桜望子)
[自由詠]山形の冬を一緒に連れてきたりんご握ればリンと冷たい (桜望子)
[自由詠]落選の知らせを受けた朝 息が白くてこれから何色にもなる (桜望子)
[自由詠]一ミリも身を削らずに愛される術はないのかアンパンマンよ (福士菜々美)
[自由詠]ラ!!!!!!トマティーナ後夜祭丸ごと煮込むスペインの街 (福士菜々美)
[自由詠]煮えたぎる鍋を前にし黙り込み間合いを探るとなりの夫婦 (福士菜々美)
[自由詠]白い息吹きかけあえばいくつものホームから発つ最終列車 (郡司和斗)
[自由詠]変声期むかえて舞台降板す五人のビリー役の一人は (郡司和斗)
[自由詠]そのための右手 呼吸を整えてフリースローの白線に立つ (郡司和斗)
[自由詠]振り向きし蟷螂の貌見つめおりジャコメッティ展より帰りきて (郡司和斗)
[題詠説]九階を春秋時代にして弾む先生の声「不、亦、説、乎」 (桜望子)
[題詠説]関数の説明終えし先生につむじ二十個いっせいに向く (郡司和斗)
[題詠説]秒針が滑らかにすすむことを知る説教響く教室の中 (福士菜々美)
[題詠縁]退屈な君の話にグラスの縁なぞった音色でこたえてしまう (桜望子)
[題詠縁]濡れ縁のひかりのつぶを眺めつつ共犯めいた眠りの土曜 (郡司和斗)
[題詠縁]前世での因縁果たすためなのか私を睨みつづける烏 (福士菜々美)
[ジョーカー]ゴム製の口を動かす漱石は自ら生涯語りはじめる (福士菜々美)
≪チーム名:半纏たたさんwithK≫
[自由詠]愛だろうチャップリンみたいに歩くポップでキュートでカラフルな街 (黒川鮪)
[自由詠]本能がきみがいいの!叫んでる!マックポテトのアラームも鳴る (黒川鮪)
[自由詠]くびすじに覆い被さる肩ごしに「どうぶつずかん」の背表紙を見る (黒川鮪)
[自由詠]今日中に撤収されるバス停の声が聞こえたような県道 (香村かな)
[自由詠]ひんやりと充てがわれたる聴診器その医師だけが知る冬の聲 (香村かな)
[自由詠]窓いちめん覆う雫は星屑に似て延々と続くドライブ (香村かな)
[自由詠]雨傘の下に寒さが訪れて柄を握る手の甲が冷たい (三潴忠典)
[自由詠]吐くことを考えながら飯を食う傾く箸を指が支える (三潴忠典)
[自由詠]帰路にあるボクシングジム水曜の底に沈んだあかりを掬う (香村かな)
[自由詠]日盛りの喫煙室に一匹の蝿ゆるやかに流れるレゲエ (香村かな)
[題詠説]解説を音声ガイドで聞いたあともう一度みる空の色あい (香村かな)
[題詠説]まんまるの牧師がかけた丸眼鏡 説教多分まるく収まる (黒川鮪)
[題詠説]お手付きを伝染病という説が広まってゆくかるた大会 (三潴忠典)
[題詠縁]遠縁の葬式で知る相関図ほのかに枝に香る紅梅 (香村かな)
[題詠縁]赤黄色夜が混ざっている空を縁日だなあと思い込む 火事 (黒川鮪)
[題詠縁]血縁のない続柄「同居人」から「妻」になる届出をする (三潴忠典)
[ジョーカー]ひとり 自分を抱いて寝る腕時計ちくりひとりちくり あ、きみの心臓 (黒川鮪)
≪チーム名:広大短歌会≫
[自由詠]天使かもしれない 扇風機は羽が五枚もあるのにここにいるから (杉田抱僕)
[自由詠]青い鳥海に溶かして濡れた手を繋いで二人もう帰ろうか (杉田抱僕)
[自由詠]親しげに差し出す彼の掌に埋め込まれてるFFボタン (瀬口真司)
[自由詠]そのときはサーカスみたいに見えたのに近づいたらおれでした、すみません。 (瀬口真司)
[自由詠]第1種理容師免許保有者の幻肢痛をも残さぬ施術 (眞子和也)
[自由詠]電柱がそう地球中の電柱がマントルに向け掘り進む時 (眞子和也)
[自由詠]幼子の寝返りと同じはやさで朝の銀河に星をばらまく (眞子和也)
[自由詠]母さんに怒鳴られちゃった クワガタを前頭葉で飼ったのばれて (石原しず歌)
[自由詠]恋人の代用品は比較的安価で美しいゼリエース (石原しず歌)
[自由詠]主人公になってくわたし白い息に縁どりつけて頭上に浮かべ (石原しず歌)
[題詠説]伝説のレスラー風な演出でおれが来るたび花火よあがれ (瀬口真司)
[題詠説]幸福の説得力を増すためにどんどん明るくなっていく人 (瀬口真司)
[題詠説]伝説のプロ薬剤師謹製のイブを飲んだらクラブに行こう (眞子和也)
[題詠縁]腐れ縁にしたいと思う君がいてぬか床を混ぜるような文通 (杉田抱僕)
[題詠縁]縁結び総括マネージャーとして道玄坂上交差点に立つ (眞子和也)
[題詠縁]縁石の下に落ちたら子どもではいられなくなるから気をつけて (石原しず歌)
[ジョーカー]けだ俺やしも官警る迫でき向逆雨るいてれさ生再逆 (眞子和也)
≪チーム名:立命短歌会≫
[自由詠]ジーザス・ファッキン・クライスト無花果とおんなじ罰を下さいますか (坂本歩実)
[自由詠]つきかげの直刺す背なか暗がりを好むもの等を好む性質 (坂本歩実)
[自由詠]鮮明な砂つぶばかり映してる君が途中で転んだビデオ (はたえり)
[自由詠]おなかから魚が生えてどうだろう 切手がわりに鱗を貼った (はたえり)
[自由詠]また凶を引くのだろうねぼくたちはそれでも斜陽を愛していたい (淡島うる)
[自由詠]待ちながらぐるぐる混ぜる甘酒のまだ煮溶けない粕のかたまり (淡島うる)
[自由詠]銅線の髪でもいいよ マンホール飛び石にして会いにいくから (立川ミキ)
[自由詠]ルービックキューブを売り飛ばす前に緑だけでも揃えたかった (立川ミキ)
[自由詠]愛してるしか云はぬ九官鳥とゐて夜平線はるかな闇夜 (草間凡平)
[自由詠]ななかまど娼婦のように色づいて遠距離恋愛断固反対 (草間凡平)
[題詠説]二時間もあればお前を口説けると言った僧侶の般若心経 (淡島うる)
[題詠説]夜の風呂やたら白くて地動説唱えるように異物 むなしい (草間凡平)
[題詠説]二十二時 キリスト教を説くひとと帰れば今日は友達がいる (立川ミキ)
[題詠縁]春の午後 瞬足履いた小人らがちゃぶ台の縁で差をつけまくる (草間凡平)
[題詠縁]縁側の鉢植えのことを考える 姻族関係終了届 (淡島うる)
[題詠縁]縁日のひよこ襲いし猫たちが栄える篠の原の夕映え (坂本歩実)
[ジョーカー]この冬が終われば二十歳 白菜を茹でては食べる茹でては食べる (淡島うる)


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